テニス参加を あきらめない・・ 諦めない ための工夫   国立リハセンターで出会った 難病の少女のテニス
 
 

国立身体障害者リハビリテーションセンターで 定期的に継続していた講習コートに訪ねてきたのは 数十万人に一人とされる難病の影響で片半身に麻痺が残った少女です。
「テニスを 習いたいのですが・・ 」 と話す少女は 左半身に機能マヒがあって 自由に動くことが出来ません。 
ラケットを握ることは可能ですが 左足は思うように動かせない状態です。

毎月2~3回 実施していた講習コートに 笑顔で参加してきた少女の名前は 弥惠さん・・ 彼女は 驚いたことに ラケットを持参してきました。 
ラケットは 難病発症前に 学校でバレーボールの選手だった彼女は テニスも楽しみたいと母親に頼んで購入してもらったラケットです と話してくれました。 
難病でバレーボールもテニスも出来ない状態で リハビリに通院していた施設の中で テニス講習が行われていることを聞き ・・ 練習会場を訪ねてきたのです。


練習に参加してからは 一歩ずつというよりも 半歩も進まない練習の繰り返しでした。 当時のレッスンは硬式テニスです。
最初はラケットに当たるようにボールを送り出し 打球時の力の入れ方を指導すると・・ 遠くへ、強く打球できるコツが分かると 彼女のテニス熱は次第に高まりました。


片半身が麻痺している状態では 左右に動くこと難しく 身体から離れた位置に送ったボールの打球が出来ません。
テニス競技を楽しむためには 少しでも 身体を動かす必要があります。 そのため  20cm・・ 30cm・・と ラケットが届きそうで 届かない位置に ボールを送りました。

動かすことの出来る右足を少し動かし 動いた位置で身体を安定させて 左足を右方向に引き寄せることで 届かなかった位置に送られたボールの打球が出来ます。
コート上のリハビリにもなった練習は リハビリ室では行わない動きですが テニス上達への熱意が 彼女の機能回復プログラムとしても役立ちました。


ハンディキャップテニスは 2バウンド後、3バウンド後の打球を有効とする競技規定があり この内容を活かし 身体から離れたボールの返球が可能になります。
2バウンド後の打球を有効とする競技は 車椅子テニスや日本ハンディキャップテニス大会の競技規定で実施された内容を参照すれば 理解を深めることができます。

彼女の努力で 動けないと思っていた身体が コート上で少しづつ動けるようになると 益々テニス練習が熱心になります。 ストロークを含め ボレーもできるようになりました。
6ヶ月、1年と時間を要しましたが テニス愛好者が ひとり コート上に笑顔でラケットを振る姿が生まれました



当時の様子ですが 離れたボールを打とうとして何回もコートで転びました。 しかし、転んでも立ち上がり、ニコニコしながら 打球練習を続けました。 
怪我をすることはなかったのですが 上手になりたいと懸命に練習する姿は 指導者の心に響くものがあり 彼女に適した練習方法を考え 様々な指導経験を活かしました。


その後 センターでの機能訓練を終了し、社会復帰して就職 趣味も増やした彼女は 民間テニス大会にボランティアとのペアと参加して 障害のない人達のペアに一勝しました。
難病を克服し スポーツで 元気に活躍する姿は その後も 彼女の周囲を明るくしたことと思います。

 
公営テニスコートで 同じ施設を利用していた複数の団体が中心になって大会を開き 障害のない人達ばかりの競技に 三組のペアが参加しました。

この大会に片半身まひの弥惠さんも参加し 活躍しました。


   
身体のバランスを取りながらのプレーは少し苦労しますが・・・  その笑顔は 輝いていました・・          本牧テニス大会競技のスナップ


 この大会模様は '85 障害者福祉週間の総理府広報の映画館用CF製作に協力しました。 各映画館では 上映前の数分間に 紹介されました